ケインズ先生の大失敗
不景気になれば減税や公共事業をやり、金融緩和によって民間の投資活動を刺激する。ケインズの有効需要管理政策により、第二次世界大戦後、世界から恐慌が消えた。その意味ではケインズ政策は大成功を収めたといってよい。 第一に、ケインズ政策にはインフレーションという副作用があった。 一般に、インフレと失業はトレードオフ関係にあるといわれる。つまり、インフレという病気と失業という病気の両方ともを一度に
は治療できない関係にある。もし、インフレと失業のどちらか一方しか選べないとしたら、人々はどちらを選択するだろうか。
2.ケインズ先生、見落とす ケインズ政策の第二の副作用は財政赤字という問題である。不況期に国債を発行し、借金をして公共事業をする。借金は返さなければならない。いつ返すか?当然、景気がよくなったときである。 答えはノーである。好景気による自然増収だけでは足りない。返済のためには増税が必要だ。しかし、国民は減税には賛成しても増税には反対する。増税を公約に掲げる立候補者は選挙で勝てないのだ。 では、当のケインズ自身はどう考えていたのか。 ケインズは人間を理性的な存在だと考えていた。だから、景気がよくなったら選挙民は理性を働かせて、増税に賛成してくれるはずだと考えていた(と私は理解している)。ところが、そうはならなかった。
3.どうする、借金の山 不況期のときに借金をするだけして、あとは返さなくてもいいとすればどうなるか。ケインズの不況対策は、ある種の麻薬のようなものであった。一度覚えたら容易に抜け出せなくな ってしまう。その結果、累積公債残高は国だけで637兆円(2010年度末)に達している。 1万円札を束ねれば、100万円で1センチの厚さになる。1000万円で10センチ、1億円で1メートルである。637兆円では6370キロメートルになる。日本列島の長さは、北海道から沖縄まで約3000キロメートルであるから、現在の借金は、実に日本列島を往復できる距離に匹敵するのだ。しかもこれは国の借金だけである。地方もあわせれば約800兆円になる。 どうしてここまでひどくなってしまったのか。ほかの先進資本主義国も財政赤字だが、日本ほどひどくない。なぜ なのか。日本人の政治意識に特別の問題があるのかもしれない。サンタクロースのプレゼントだって、誰かがそのコストを負担している。
もはや@だけによって返せる金額でないことは明白である。Aも必要であろう。消費税を40%くらいに引き上げれば不可能ではないかもしれない。しかし、今の民主主義のもとでは国民はそうした政策を 支持するとは思えない。ではどうするか。 最後に残された方法は、Bのインフレしかない。 インフレによって借金が帳消しなるというが、それで損をするのは国債を買っている人である。実は、今国債を一番たくさん保有しているのは銀行である。だから銀行が一番損をする。銀行が損をするということは、国民の預けたお金が目減りをするということである。結局、
(参考) 私の書いた次の寓話もお読みいただけるとうれしいです。
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